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お題「棒」「山」「鳥飼」

う~ん。

まぁ、こんなもんか。

どうぞ。
「何度同じ失敗をすれば分かるんだ!?」

「すみません」

「謝れば良いってものじゃないだろっ!? だいたいお前は……」

上司からの叱責。

もはやこれは私の日課であった。

私はほぼ全てにおいて平均以下の能力しか有していないが、いくつかは才能を持っている。

私は小さなミスが起こっただけで冷静な判断力を失い、大きな被害へと導く天才なのだ。

今日も、そのミスが起こった時点で直ちに適切な行動をとれば防げたであろう被害を、2倍にも3倍にもしてしまった。

ああ。

なんて情けないんだろう。





会社が休みの日には決まって山に登っていた。

山は私とはちがって、びくびくしていない。

じっと座り込み、堂々としている。

私もこの山のように強い精神力があれば、もう少しうまくやれるのかもしれない。

ここにいれば、もしかすると私もこの山のように……。

そんな風に、これまでの失敗で落ち込んだ自分を癒すために山に向かっていた。

でも、それも今日で終わりだ。



私は会社を辞める決意をした。



もう無理なのだ。

頑張ろうとすればするほど、うまくやろうとすればするほど、焦りが先に出て失敗を重ねてしまう。

こんな私などいない方が良い。

私は辞表を胸ポケットにしまい、代わりに煙草を取り出した。

ここで吸う最後の煙草だ。

そう思うとなぜか感慨深く、私は少し涙ぐんでしまった。

ああ。

弱い私が忌々しい。



お気に入りの大木に背をもたれ煙草をふかす。

そのまましばらく、ぼー(棒)っとしていた。

ひとつあくびをして、煙草の火を消す。

そしてそのまま眠りに落ちた。




ふと、焦臭い匂いが鼻についた。

なんだ、これは。

何かの焼ける……?

はっと目を覚ますとそこは火の海だった。

なぜだ?

煙草はちゃんと消したし、この山火事は私のせいでは・・・・・・。

放火、か?

理由はよく分からないが、とにかく自分のいる山が燃えていることだけは確かだった。

早く何らかの対処をしなければ、と思い私は一目散に駆け出した。

まだ火の届いてない道を選んで駆け抜ける。

どうやら運良く安全な場所へと逃げることができたらしい。

燃え盛る山を振り返って私は一息をついた。

実際は一息などついている場合ではない。

早く誰かに連絡するか、あるいは消火活動にあたるといった行為を起こさなければ取り返し(鳥飼※)のつかないことになる。

しかし、私の足は動かなかった。




燃える、燃える、燃える。

山が燃える。

静かで落ち着いていた山が猛々しく燃える。

あんなにもどっしりと構えていて、自分とは似て似つかぬと思っていた山が叫び声をあげている。

凛々しき山でも慌てふためくときというのはあるのだ。





私は何故か、そのことに深く安堵した。





背後から人の声が聞こえる。

どうやら私が連絡するまでもなく、消火活動のために人が集まってきたらしい。

情けなく火の涙を散らかす山を落ち着かせるために、わらわらと人が集まってきたのだ。

私のときは慰めてくれる人などいなかった。

そう。この山くらいしか。



今は、私を慰めてくれた山が慰められる側に回っている。



ここが恩返しのときだろう。

私は声のする方に駆け出そうとし、ぴたりと足を止めた。

半身だけ振り返り、胸ポケットに手を入れる。





そして、取り出した辞表をすばやく投げ込んだ。



完。


(鳥飼※)“とりかい”しのつかない……。無理やりだ。


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2009.03.19 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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