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お題「お茶」「胡椒」「山姥」


山姥て。

と最初に思った。

そして、出来上がったのがこんな感じ。

どうぞ。
非常に困ったことになった。

とある有名な湖沼がある森に入ってきたまでは良かったが、

突然、車が故障してしまい、帰るにも帰れなくなってしまったのだ。

僕は宛てもなく森を彷徨うことになった。

とにかく誰かいれば良いのだけれど……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



さて、見るからに怪しい小屋を見つけた。

都合よくこんなものがあって良いのだろうか。

しかし、陽も落ちかけていることを考えると一晩眠れる場所を確保したい。

僕は意を決して小屋の扉をたたいた。

中から、ぱたぱたという足音が聞こえた。

とりあえず足はあるらしい。

出てきたのは、若い女性だった。

その手には包丁。

情けなくも僕は悲鳴をあげたのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ごめんなさい。夕食を作っていたの」

女性は顔を赤らめながら言う。

中に通された僕は質素な作りの椅子に座って答える。

「いえいえ。こちらこそ恥ずかしいところを」

僕は先ほどの失態を消すかのように、彼女から出されたお茶をぐいと飲み干した。

「正直、山姥かと思いましたが」

「失礼ですね」

彼女は柔らかく笑い、夕食作りに戻った。

そんな彼女の背に向かって声をかける。

「あなたはなぜこんなところに住んでいるんですか?」

リズム良く響いていた包丁の音がぶれた。

「なぜ、そんなことを聞くのかしら?」

いやに冷たい声が返ってきた。

「いえ。単に興味本位ですが……」

「そう。どうしても聞きたい?」

「え、えーっと……」

彼女の気迫に圧された僕は口ごもる。

その沈黙を彼女はどう受け取ったのだろうか。

くるりとこちらを振り返ると、彼女は不敵に微笑んだ。

「……それはね」

「そ、それは?」





「ここに迷い込んできた人間を食べるためですよ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



彼女の口が耳辺りまで避け、手に持った包丁が僕に向かって飛んでくる。

慌てて避けたせいで、まだ少し残っていたお茶が僕の服を汚した。

少し熱い。

しかし、そんなことを言っていられない。

僕は彼女の脇を過ぎて、何か武器になりそうなものを探す。

これを――。

僕は後ろから何かで殴られたらしかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



包丁を研ぐ音。

というのは、やはりおぞましい音である。

僕は両手両足を縛られた格好でその音を聞いていた。

「……なんで人を食べるんだ?」

「嫌いだから」

「嫌い?」

「ええ。人間は私のことを化け物と言うんだもの」

彼女は研ぎ終わった包丁を嬉しそうに見つめながらにやりと笑った。

背筋に悪寒が走る。

ああ、こいつは本物の化け物だ。










僕と同じで。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



殺られる前に殺れ。

というのは、この稼業を始めたときに最初に学んだことだった。

縄で縛られたくらいでは僕を拘束はできない。

僕は縄を燃やして解くと、先ほど手に入れた胡椒をぶちまけた。

無論、僕も目や鼻にダメージがあるが、それは彼女も同じだ。

突然の出来事に慌てふためいている彼女に向かって、僕はいわゆる“御札”を突きつけて、呪文を唱える。

これは、妖怪やこの世のものではない類を消すときに唱える呪文だ。



「できれば友好的に解決したかったけれど、先に仕掛けてきたのは君なので仕方ないよね?」



彼女が煙のように消えていく。

苦しそうに顔が歪むのを見て、僕は思わず目をそらした。

これだけは何度見ても慣れない。

僕は心境を悟られないように、あくまで強気に言い切った。



「僕も死にたくはないので」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



残された僕は小屋の散策を始めた。

そして、彼女の日記を見つけた。

どうやら彼女は昔、この森の外で暮らしていたことがあったらしい。


人間は優しい、という言葉が何度も出てきた。


それだけで僕の胸は締め付けられる。

なぜ、僕たちは分かり合えないのだろう。



なぜ、僕はこうすることでしか人間と交われないのだろう。





僕の手で消してしまった同胞に黙祷を捧げ、僕は次の依頼人に会いに行く。

人間が僕と関わってくれるのは、僕が都合良く働いてくれるからだ、ということには残念ながら気づいている。

けれど、僕は辞められない。

いつか、人間が僕らのことを分かってくれることを信じたいから。

吹けば消えてしまうような、ちっぽけなつながりでも、

僕と人間がずっとつながったままでいれば、きっと本物のつながりが生まれる日が来ると信じているから。




だから、その日のために僕は今日も仲間を殺す。



完。


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2009.02.28 Sat l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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