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お題「刀(剣)」「宿木」「王妃」

時間がねぇ。

うん、時間がねぇ。

出来があまり良くないときは、すかさず言い訳を入れる。

このずるさ加減ね(笑

すみません。どうぞ。
「戦争は嫌いです」

それが彼女の口癖だった。

世は、まさに大混乱を極めた戦国の時代。

そんな中、徹底的な平和主義を掲げ、それでいて不思議なことに全く敵襲など受けたことのなかった小国のお話。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「見ての通り、我が国は豊かではありません」

「そのようですね」

ボロ布をまとった男は王妃の面前で、不躾にも首肯した。

しかし、王妃はそんな彼の態度にも笑みを浮べる。

「ですから、あなたに仕事らしい仕事を与えることはできません」

「……そうですか。剣術辺りなら自信があるのですが?」

「なりません」

「?」

「戦争は嫌いです」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



この男がこの国にやってきたのは数週間ほど前のことだった。

戦争で負傷したらしき彼は、動かぬ身体を引きずりながら必死に人のいる地を目指したのだ。

結果、この国に辿りつき、王妃によって拾われたのである。

王妃曰く、

「怪我人は早急に手当てすべし」

であった。

男はしばらく傷で動けなかったが、劇的な回復力を見せつけた。

身体が動くようになると、あまりお金のない彼はぼろ同然の布を購入し、それを服として着込んだ。

その後、自分を助けてくれた王妃に礼を言うために城に足を運び、上の会話を行ったのである。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ですから、あなたはしばらくこの城で働いてください」

「はぁ」

「あなたの持っていた刀はこちらで厳重に保管していますので、ご安心を」

「はぁ」

男は気の無い返事をしてぺこりと頭を下げると、王妃の前から姿を消した。

「あのように、どこの人間かも分からぬ男を城内においても良いのですか?」

「構いません」

王妃はそう言うと席を立ち、自室へと戻っていく。

王妃の自室。そこに1振りの刀が置かれていた。

それはまさしく例の男の刀であり、柄には特徴的な絵が彫られている。

「……」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「掃除でもすればよいのか?」

男はうろうろと広い廊下を歩きながら、そう独り言ちた。

「掃除道具は、と」

男は何のためらいもなく一室の扉を開けると、そこから掃除道具を取り出した。

そこは一見何の変哲もない部屋。

普通の人ならそこに掃除道具があるとは気づかないだろう。



小さな国とは言っても、さすがは王妃の住む城。

部屋丸々1つ分を掃除道具入れとして使うくらいには余裕があるらしい。

「ん? 部屋1つ分の掃除道具入れ?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「大変です!」

「何事ですか、騒がしい」

「隣国が、どうやら攻めてきているようです!」

「何ですって!? 確かあの国とは不戦協定を結んだではないですか?」

「そんなのはただの紙面上での取り決め。もはや、この時代で戦争をしないという選択肢はないのです」

「しかし、私は戦争は嫌――」

「王妃。ご決断を。このままでは国民が……」

王妃の顔が苦渋に歪んだ。

戦争は、嫌いだ。

戦争は悲しみしか生まないから。

戦争は……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「お兄様!?」

「良いから、お前は隠れてろ。見つかったらただじゃ済まない」

「でも、お兄様が」

「俺は大丈夫だ。鍛えているからな」

「……でも!」

「お前は、この国にとって必要な人間だ。ここで死んじゃいけない」

兄は妹を陰に隠すと、震える手で刀を持って飛び出した。

妹の兄を呼ぶ声が聞こえる。

けれど、それもすぐに聞こえなくなった。



兄は戦争の渦に巻き込まれ、そして、消えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「私が行きます」

王妃は決意を込めた瞳で立ち上がると迅速に指示を出した。

「あくまで防衛が第一です。良いですね」

「かしこまりました」

いきなり慌しくなった城内で、暢気に窓ガラスを拭いていた男はふと庭にたくさんの宿木があることに気づいた。

宿木?

男は渋い顔をして唸った。

確か、自分の持っていた刀には――。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「では、参りましょう」

「はい」

王妃は自ら先頭に立ち、かき集めの軍隊を引き連れて進んだ。

とにかく国内に入れる前に、止めなければならない。

前方には敵国の軍隊が見える。

こちらの倍はいる。

しかも、こちらは訓練などされていない素人兵ばかりだ。

王妃は唇を噛み、悔しそうにぽつりと





「戦争は嫌いなんじゃないんですか」




呟けなかった。

誰かがそれを代弁するかのように口を開いたのだ。

みると、そこには例の男が小さく笑って立っていた。

「あなた!? いったい何をしているのです。あなたはこの国には関係ないのだから、早く避難なさい!」

王妃に睨みつけられるが、男は一切怯まずに淡々と言う。

「関係なくはない。そうですよね?」

「……あなた」

「僕の刀を返してください」

「……」

王妃は静かに自らの腰に差していたそれを返す。

柄には、宿木。

「この国は、宿木が名物なんですか?」

「ええ。この国は宿木を守り神のように扱っています。宿木の花言葉は“忍耐強い”。我々はそうやって生きてきました」

「なるほど。あの頑固さは血だったんですね」

男は悲しそうに笑うと刀を抜いた。

「彼が教えてくれた花言葉はそれではありませんでした」

男は王妃に背を向けて面前に迫る大軍をにらみつけた。



「宿木の花言葉は“困難に打ち勝つ”だそうです」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



結果的に、国は守られたと言えた。

例の男がほぼ1人で大軍を打ち倒したようなものだった。

彼はとにかく軍の編隊を壊すことに徹底した。

大将らしき人物を斬り倒し、隊列の足をかく乱させた。

結果、軍隊は予想外の先制攻撃に怯み、すかさず王妃の号令で遠方から一斉に飛んだ矢と命を懸けてつっこんで来た素人兵士に負かされた。

勝利に喜ぶ中、王妃が男に近づいていったとき、彼は地面に倒れたまま既に虫の息であった。

しかし、その手にはきつく刀が握られている。

「早く手当てを」

「良いです、もう」

「しかし……」

「これをくれたのは、あなたの兄に当たるんだと思います」

「え?」

「彼はいつもあなたの話ばかりしていました」

男はゆっくりとかみ締める様に言葉を紡いでいく。

「お城には無駄に部屋があって、掃除道具入れに使っている部屋があるくらいだ、なんてことも言っていました」

男の手から力が抜けていく。

「彼がどこぞの国の王族の血をひいているだなんて、正直ここに来るまでは半信半疑でしたよ」

とうとう男の手から刀が離れ、地面に落ちた。

「最期に彼は言いました」

唇はもうほとんど動かない。喉から出る音としての言葉だけが淡々と続く。





「この刀をお前にやる。俺の代わりに、あいつを守ってくれ」





「そう、でしたか」

「この国が平和でいられたのは――」

男は最期に柔らかな笑みを浮べた。



「……」



息を引取った男を抱きかかえて、王妃はむせび泣いた。

自分は昔からずっと守られてばかりだった。

今も、そう。

誰かに守られて、守られて、守られて。

自分から戦うことなんてしたことなんてない。

だから、自分は変わらなくちゃいけない。

王妃は兄の形見である刀を拾い上げ、祈りを捧げた。





「戦争は嫌いです。でも、私は戦います。もう、心配しないでください」



完。


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2009.02.26 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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