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お題「庭」「イカ」「呉服屋(生地屋)」

うん。

もっと広げれた気もする。

どうぞ。

朝はいつも明るい気持ちで目を覚まします。

太陽は美しく、それに照らされる私をも綺麗に映し出してくださるようです。

お布団を畳み、部屋から出ますとお母様が台所に立っておられました。

「おや、今日は早いねぇ。仕事は休みなんだろ?」

「はい。でも、目が覚めましたので」

私はそう答えて洗面所へ向かいました。

顔を洗うときは温かいお湯よりも冷たい水の方が好きです。

しゃきっと致します。

洗面所から出ますと、お母様のお隣で朝食の準備を手伝います。

お母様と比べて、あまりにも手際は悪く、私が作ったものはあまり美味しそうには見えません。

それが少し悲しいのですが、やはりお母様には敵わないのですね、と思う気持ちは心地よいのです。



お昼になりますと、私は庭を散歩いたします。

特に目的があるわけではございません。

庭には1本の大木がございます。

大木といっても、それほど大きくはありません。

けれど、私はこれよりも偉大な木を見たことがありませんし、これが私の家の庭にあることを誇らしく思っております。

ふと足元を見ますと、小さな花が咲いておりました。

とても可愛らしい白い花です。

大木に寄り添うように咲く花を見て、私はあの人のことを思い浮かべました。

どうやら私は、この大木と花にあの人と私を見たようなのです。

先ほど、花のことを可愛らしいと喩えたことを後悔しております。

私はこんなに可愛らしくありません。

しかし、あの人は全くこの通り、大木のような存在でございます。

あの人は、とての優しく、そして知的な男性でございます。

私を大きく包み込んでくれる包容力も有しておられます。

私のように、小さな呉服屋の娘では釣り合わないことはよく存じております。

恋をするということはとても切ないものです。

絶えられなくなって、私はその小さな花を摘み取りました。

この花はすぐに枯れてしまうかもしれません。

私はいそいで花瓶を取りに向かうと、水を入れてその花を自分の部屋に飾りました。

もしこれが、2日……。いえ、3日枯れなければ、私はあの人に想いを告げようと決めました。



夜になると次第に気持ちが下がっていきます。

それは多分、太陽が見えなくなったせいなのでしょう。

私は店のご主人に熱心に勧められて買ってきたイカを料理しながら、またあの人のことを想います。

私の不出来な手料理ではあの人を喜ばせることができないでしょう。

私の不出来な容姿ではあの人を満足させることができないでしょう。

どうして、あの人が私なんかを選んでくれるでしょうか。

いけません。

私は急いで窓を開けて空を見上げました。

夜空には星と月がきらきらと輝いておりました。

やはり美しいものを見ると心が洗われます。

太陽ほどではありませんが、夜でも私を勇気付けてくださる方があるようです。

私はほっと胸をなでおろし、料理の続きに取り掛かりました。

私の手料理をあの人に食べさせてあげたい。

少しだけ前向きになれたような気がいたします。



眠るときは静かに地面に埋まっていくように眠ります。

身体全体が沈んでいくような感覚の中、私はあの花瓶に視線を向けました。

どうやらまだ元気に咲いているようです。

それが嬉しく、それから少しくすぐったい気分のまま私は布団に身を委ねました。

そうしていると私は何故か突然、はしたないことをしたくなりました。

きちんと布団をかけて枕に頭を埋めて眠るという格好をやめたくなりました。

だから私は思い切って掛け布団を身体から外して、それをぎゅっと抱きしめるという

ややもすると小さな子どもが親に抱きつくような、そんな格好で眠りに着きました。



夢を見ました。



あの人が私の目の前にいます。

私は思い切ってあの人に抱きつきますが、あの人が私を抱きしめ返してくださることはありません。

はっと致しました。

どんなに布団をきつく抱きしめたところで、それは私の独りよがりなのでございます。

私の肌に伝わるぬくもりはあるけれど、返してくれるぬくもりはございません。

誰かが見ているわけではありませんが、罰の悪そうに舌を出して布団をきちんとかけなおしました。




こちらの方があの人の力を感じられるように思います。



いつの日か、あの人の腕の中で幸福に身を委ねられる日が来るのでしょうか。

そんな日を夢見て、私は偽装されたぬくもりにちょっぴりの罪悪感とちょっぴりの満足感を覚えます。





花瓶の私は、あと何日ほど可憐に咲いてくれるのでしょう。





完。


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2009.02.21 Sat l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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