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お題「宿」「鼠」「肉屋」


もう、ここ数日の駄作っぷりは異常。

まともなの書きたい。

今日もだめだ。

どうぞ。
――2月某日。

雪のちらつくこの日、とある宿の一室で死体が発見された。

死体は、某有名作家のものであった。

この宿があったのは頭に“ど”がつくほどの田舎で、さらに宿泊客が彼しかいなっかたこと、遺書があったことなどを踏まえて警察は自殺と断定し、この一件はすぐさま幕を下ろした。

遺書は破られた原稿用紙であり、以下のような内容が書かれていた。



全く、この世は随分と立派に生きている人が多いみたいだ。

私には、そんな世の中を生きていく自信はない。

――さようなら。



結果、翌日の新聞には小さな記事であったが、その作家が自分の小ささに耐え切れず、苦しみの上で死を選んだ、などと書かれていた。

著名人も数人ほど、彼の自殺について言及している。

「鬱になりがちな人でしたから」

「得てして作家と言うものは、自分に絶望しがちなものです……」

それらを読みながら、1人の男が小さく唸った。

「どうされました?」

「……ん、いや」

その遺書をまじまじと見つめながら、呟いたのは私立探偵の空原(そらはら)。

そんな彼に問いかけたのは、助手のヤクミである。

「たいしたことじゃない」

「んん?」

彼はけだるそうに遺書を朗読した。



全く、この世は随分と立派に生きている人が多いみたいだ。

私には、そんな世の中を生きていく自信はない。

――さようなら。



「どこか引っかかりますか?」

彼女は彼の思考を理解できず首をかしげた。

「別段おかしくはない。ただ解釈の仕方にひっかかりを覚えただけだ」

「解釈、ですか?」

「そうだ」

彼は戸棚の中から数枚の写真を取り出して彼女に示した。

それは、彼が例の作家と映っている写真だった。

「空原さん、あの人と知り合いだったんですか?」

「昔、ちょっとな」

彼はそれから、こほんと咳払いをいした。



「私立探偵とは、とても素晴らしいお仕事をやられていますね。僕には到底真似できません」



「なんですか、それは?」

「初めて彼がここに来たときにいった言葉だ」

「へぇ……褒められたんですか?」

彼女の感想に彼はため息をついた。

「これは皮肉だ」

「へ?」

「作家としての彼は随分全うな人間だ。作風も、世界はなんて輝かしいだ。それに比べて私はなんて小さいんだ、というようなものが多い」

「はい」

「だから勘違いをする輩がでてくる」

「と言うと?」

「つまり、奴は皮肉屋なんだよ。世界は輝いている。というのは世の中をバカにした言葉だ。奴は自分を卑下する人間じゃない。自分を卑下する作品を書く自分を卑下する人間を卑下するのを好むんだ」

「すみません。もう一度、いいですか?」

彼は首を横に振り、苦笑いを浮かべた。

「あいつの遺書は、自分自身への絶望を示しているんじゃない。世界への絶望を示しているんだよ」

彼は写真をもとあった位置に戻しながら続ける。

「浮かれた奴らの多い世界で生きていくことは無意味だ。だから死ぬ。そういうことだ」

「……へぇ」

彼女は嘆息しながら、ふと何かに思いついたらしく口を開く。

「でも、ただの知り合いに過ぎない空原さんがそのことを知っているってことは、他の友人たちも彼が皮肉屋だって知っていたはずですよね」

「そうだろうな」

「じゃあ、なんでそういう意見が出ないんでしょう」

「隠しているんじゃないか」

「はい?」

彼はもはやその事件には興味がなくなったかのように、別の記事に目を通していた。

「私の見立てでは、これは殺人事件である可能性も考慮すべきだと思う。今の段階では限りなく白に近いグレー(注1)だがな」

「……なぜ、そう思われるんですか?」

「指摘すべきポイントは2点」

「はぁ」

「1つは、遺書が破かれた原稿用紙に書かれていたこと。もう1つは1人称だな」

彼女はいまいちピンと来ないのか、んん、と小さく唸るだけだった。

「遺書を書くのに原稿用紙を使うところまではまだいい。作家としての最期としては、むしろ相応しいともいえる。だが破る必要は無いだろ。つまり、それは遺書ではなく、作品の一部の可能性がある、ということ。それから、奴は自分のことを私とは言わない。僕、と言う」

「……でも、それは些細なことじゃないですか。それくらいで殺人事件だとは――」

「言えないな。だから、限りなく白だと言っただろ」

彼は、ちらっと新聞から目を離し、彼女に視線を向けた。

「もしかすると、これは奴の最後の皮肉なのかもしれないな」

「え?」





「優秀な警察の方々なら、僕が残した奇妙な痕跡に、きっと気がついてくれるでしょう。ってな」





完。



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2009.02.11 Wed l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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