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お題「ウインドウショッピング」「宝石」「タイムスリップ」


まとまってない。

50分って短い。

タイトルは、

『アンフェア』

では、どうぞ。
全く世の中は不公平にできているとしか考えられない。

街を歩けば、人、人、人。

しかも、こぞって小奇麗な格好をしてやがる。

ああ、それに比べて俺の格好はどうだ。

もう3日は同じ服だ。

風呂に入ったのも3日前だ。

腹いっぱい飯を食ったのも3日前だ。



全く世の中は不平等だ。



富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる。

当然、俺は後者である。



しかし、そんな俺にも幸運が舞い降りた。



そうさ。

もし、世の中が本当に公平で平等なら、これくらいのことがなければ釣り合わない。

それくらい俺の人生はどん底だったわけだ。





突然、俺の目の前に現れた初老の男は安っぽい懐中時計を俺に手渡して言った。

「これは、タイムスリップができる時計だ。使える回数は3回。過去でも未来でも、どこにでもいける。行きたい時間を強く念じてボタンを押すが良い」

胡散臭いこと、この上なかったが、「どういうことだ」と俺の口から疑問の声が出たころには、既に老人の姿はなかった。

「よく分からんが、3回っつうことは、1回くらい試してみても問題ないな」

そういうわけで、俺は懐中時計の上についてあるボタンを押してみた。

「とりあえず30分前だな」

瞬間、世界が反転した。








……で、これだ。

どうやら俺はもったいない使い方をしてしまったらしい。

この懐中時計は本物だ。

本当にタイムスリップできた。

そこら中の人をかたっぱしから捕まえて時間を聞いたから間違いない。

俺は、30分前にいる。

さて、そこで問題だ。



30分前の俺はどこにいる?



答えは、いない、で一致した。

30分前に歩いていたはずの場所に俺はいなかった。

ということは、だ。

昔読んだ漫画や小説の類に出てきた言葉を引用するならば、

俺は今パラレルワールドを生きている、ということになる。

30分後に懐中時計を押した俺がいる世界と、懐中時計を押さなかった俺がいる世界ができたわけだ。

だんだん頭がこんがらがってきた。

けれど、とにかくあれだ。

俺がもうひとりの俺に出会って混乱する、という目に遭うことはなさそうだ。



そこで、だ。

使用回数はあと2回。

これを、どう使うべきか。



俺の頭には、先ほどまでの不公平・不平等に対する憤りの思いしかなかった。



だったら、やることは1つしかない。

とにかく金だ、金しかない。





ウインドウショッピングといえば聞こえは良いが、俺は単に物色をしていただけだ。

この世界で窃盗を犯しても、別の時間軸に飛びさえすれば、捕まるのはこの世界の俺ということになる。

なかなか複雑な話だが、どこかのパラレルワールドの俺、すまん、ということだ。

この俺が捕まらなければ、それで良い。



世の中は、徹底的に不公平にできているんだからな。



真昼間であったが、俺はすぐさま窃盗を開始した。

めぼしをつけた宝石の入っているガラスを店員の目の前で突き破ったのだ。

「お、お客様っ!?」

店員が突然のことに呆気取られている隙に、2、3の宝石を掴むと、懐中時計のボタンを押した。

そして、世界は反転したのだ。







……で、これだ。

宝石を盗んだ時間から1時間前に飛んできた俺の目の前に、あの老人がいた。

「おう、じいさん」

俺は軽く挨拶して、手の中にある宝石を確認した。

うんうん。いい輝きだ。

売ればきっと高値になる。

「良いもんくれてありがとうな」

と、言った瞬間に右手をつかまれた。

老人とは思えないほどの握力だ。

「な!?」

「騙したようで申し訳ありませんが、あなたをここで逮捕させていただきます」

「は!? 何を言っている!?」

俺の動揺は老人の次の行動でピークに達した。

特殊メイク、というやつだろうか。

老人は顔にはりついたマスクをぺりぺりとはがしていったのだ。

現れたのは、精悍な顔つきをした青年。

彼は胸元から身分証明書らしきものを提示して、告げた。

「はじめまして。秘密警察、時空部署の者です。あなたを窃盗罪の現行犯で逮捕します」

「え?」

彼は、そう言って淡々と俺に手錠をかけようとする。

「くそっ!」

そこで俺は例のボタンを押した。

残り回数は1回。

とにかくどこでもいいから飛べ!

そして、世界は反転した。







……のならば、どれだけ良かっただろうか。

かち、かち、という虚しい音が響く。

「申し訳ありません。実は使用回数は2回だったんです」

「…………あ?」

「あなたは、西暦20XX年。その懐中時計を悪用し、時空を越えた大テロリストになります」

「なん、だって?」

「よって、我々は全パラレルワールドを回って、あなたを逮捕し続けています」

俺の腕に手錠がかかり、懐中時計が地面に落ちた。

「あなたは、累計129人目のあなたになりますね」

あまりの展開に俺の頭はついていけず、その場に立ち尽くしたまま秘密警察と名乗った青年を見つめた。

「つまり、ですね。あなたがそれを悪用して大犯罪を起こす前に、敢えてこちらからそれを提供して軽犯罪を犯した時点で逮捕する。という方式を行っているわけです」

俺の左耳から右耳に彼の言葉が抜けていく。

「全パラレルワールドから、あなたという存在が消えるまで、あなたは捕まり続けます」

ああ。

そうか。

もういい。

もう分かった。

つまり、あれだろ。

俺が犯した罪でパラレルワールドの俺が迷惑を被っているのと同様に、

俺も今、別のパラレルワールドで犯罪を犯しやがった俺に迷惑をかけられているわけだ。







世の中は徹底的に平等だ――。



完。


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2009.01.29 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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