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お題「ローキック・両手・百鬼夜行 」

久しぶりに書いたので、なんだかまとまってない気がします。

でも、せっかくなので載せます。

どぞ。

がたたたたったん、がたたったん。
バスの一番後ろの席に深々と座りながら、不規則なリズムの揺れを感じる。
がたたん、がたたた、がたたたたん。
道が悪いのか、運転手が下手なのか、しかし、この不安定なゆれ方は妙な眠りを誘う。
私はわけもなく視線を窓の外へと移した。
何もない。
移り変わる景色なんて、ない。
変わらず、何もないが続く。
がたたた、がたがた、がたたんたん。
なぜ、私はこのバスに乗っているのだろう。
がらんとした車内に客は3人。
運転手の真後ろに陣取る老人は、背筋を伸ばして座っている。
背中からぴりりとした緊張感が伝わる。
もう1人は若い女性だ。
彼女は文庫本に目を落としたまま、バスの揺れに身を任せている。
そして、私。
たいした荷物も持たず、ふらりとコンビニに出かけるような格好だ。
私は、なぜ、このバスに、乗っているのだろう……。

がったた、がたたん、がたがったん。
どうやら眠っていたらしい。
目が覚めると、客が1人減っていた。
老人がどこかのバス停で降りたらしい。
女性は相変わらず読書に没頭している。
私は大きくあくびをすると、ぼんやりと外の景色を眺め始めた。
がたたたたんたん、がたんがたん。
いったい、どこまで来たのだろう。
外の世界は無の状態が続いている。
どこまでも続きそうでいて、急に終わりそうでもある。
変わらぬ景色が、変わらぬ世界が、そこにあった。
がたん、がたたん、がたったたん。
女性が文庫本を閉じる音がやけにクリアに聞こえた。
私は視線を窓から車内へと戻す。
冷たい瞳が私を捕らえていた。
どこかで見たことのある目。
どこかで見たことのある顔。
どこかで見たことのある人。
女性が私を見つめたまま立ち上がった。
どきりと心臓が跳ねる。
私は慌てて視線を窓の外へと向けた。
あの永遠の世界へと逃げ出そうとした。
しかし、そこにあったのは、ただの暗闇で、
先ほど頭をよぎったように、世界は急に終わりを告げた。
「まだ、降りないの?」

それがいわゆる死者を運ぶ箱舟だった、というオチではない。
かといって、あながちハズレというわけでもない。
私にもよく分からないというのが適切だと思う。
女性の言葉を最後に気を失った私は、暗がりに転がっていた。
ここが死後の世界と言われても別段驚きはしない。
少し、面白みにはかけるが。

気づくと、私は異形の集の真っ只中に転がっていた。

いわゆる百鬼夜行というやつだろう。
どこかの書物で読んだような妖怪たちが私の周りを進んでいく。
ふと、見覚えのある顔が傍を通り過ぎた。
あの老人だ。
なるほど、カレは妖怪だったか。
……と、すると?
ぽんと、肩に手が置かれた。
細い指だ。
どこかで見たことのある指。
文庫本をめくる音が、聞こえた。
「まだ、人間だったの?」

私は慌てて両手を合わせて呪文を唱える。
「カタシハヤ、エカセニクリニ、タメルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコニケリ」
百鬼夜行の害を避けるための呪文だ。
しかし、肩に乗った重みは消えない。
顔が近づく気配がする。
冷たい息が私の頬にかかる。
私は咄嗟にカノジョの指を掴んだ。
ぞくりと身体全体が震えた。

どこかで聞いたことのある声――。
私は昔、この妖怪に?

カノジョの指を掴んだまま離せない。
これまでのヒトとしての記憶が薄れていくのを感じる。
私は、なぜ、あのバスに、乗っていたのだろう……。

私は、

私は、

私は、人間だった、の?

考えるより早くに身体が動いた。
このままでは何かが失われて……いや、違う。
何かを得てしまう気がした。
だから、私は力の限り彼女を蹴り飛ばした。
「まだ、思い出さないの?」

逃げ出す途中、あの老人と目があった気がした。
私は、あの妖怪のことも、よく、知っている。

知って、いる。



翌日、私にしては珍しく気持ちの良い朝を迎えた。
今日の朝ごはんはこれまでにないくらい美味しかったし、
まだ残りがだいぶ冷蔵庫に保管されている。
仕事から帰ってくるのが楽しみだ。
ごはんが美味しいと充ちた気分になるから素晴らしい。
そういえば、通勤途中に気づいたのだが、家の近くの電柱が折れているのが騒ぎになっていた。
私がローキックを食らわせた相手はこいつだったのだ。
なぜなら、あれは夢だったのだから。
酔っ払った私が夢を見て、電柱を蹴り倒したのだ。
それで良いじゃないか。

それで。

ローキックで電柱を蹴り倒せる人間がいたって良いじゃないか。
それにしては、足に目立った外傷がなくったって良いじゃないか。

そういえば折れた電柱にぶつかって怪我をした人間がいたらしい。
その人には申し訳ないことをした。
しかも、不思議なことに、その人間は今朝方病院から消えているのが発覚したらしい。

別に、良いじゃないか。

ニンゲンが1人消えるなんて、よくあることだ。

だって昨日は、百鬼夜行に遭ったのだから。






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2011.09.23 Fri l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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