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年末に記事にしたように、自作小説をぽつぽつと投稿していきます。

とりあえず、一発目。

『日向に降る雪』

第1話からです。

つづきから、どうぞ。
 大学生活とは満喫したようで満喫していない、そんな儚いものであった。

 という人も多いのではなかろうか。

 かくいう私も多聞に漏れず怠惰な4年間を過ごした。

 さらに、就職活動なる天から降りてきたあみだくじの如く運に大きく左右される行動を起こす気など更々なかったため、もう2年ほど大学に居座ることにした。

 すなわち、私は大学院修士課程の学生になったのである。
 
 かと言って、さほど大きく生活が変わったわけではない。

 学部生のころに比べると一段と忙しくはなったが、しかし、どこか虚しいことに変わりはない。

 自分に何が足りないのか、それは痛いほどに理解していたが、頭で理解しているからといって、そう簡単に補えるものでないことくらいさすがに熟知している。
 
 恋とはするものではなく落ちるものなのである。
 
 要するに私は元来の生真面目な性格が災いしてか、石橋をも叩いて渡る性分ゆえ、大学の4年のうち一度もどこかに落ちることがなかったのである。
 
 さて、そんな私であるが修士課程として研究生活を始めた矢先、叩いて渡ったはずの石橋ががらがらと崩れ落ちる体験をすることになった。
 
 それが彼女、雪村さんとの出会いであり、そして、私の長きに渡った枯れ果てた生活を一変させることになるのである。

 さて、そんな私の衝撃的な体験を語り尽くす上で外してはならない人物が居る。

 中学、高校と腐れ縁のようにして、共に歩み、何の因果かさすがに学部までは異なったが大学まで同じ道に進むことになった男である。

 彼もまた、大学院へ進学し、頻繁に食事や酒を共にする仲である。

 彼の名は早坂といった。

 これが少しばかり変人で、どう変人かを表わすのは難しいのだが、1つだけ話すとすると、あれしかあるまい。

 彼は物理学を専攻しており、成績はそれなりに良い。

 ただ、物理学への愛情が気持ち悪いくらいに深い。

 それゆえ、彼と関わる人は皆、当然のことながら、彼は博士課程まで進み、果てには物理学と結婚するのではないかと言う。

 しかし、彼にその気はない。私は以前、その理由を尋ねたことがある。

 すると、彼はにやりと笑って言ったのだ。

「ドクターと呼ばれるより、マスターと呼ばれた方が格好良いではないか」 
 
 瞬間、私ははたと気づいたのだ。

 当時彼がはまっていたアニメだか漫画だがの主人公は、人間とは思えないくらい大きな目をした可愛らしいキャラクターから“マスター”と呼ばれていた。

 つまり……長々と説明する気は失せるが、彼はそういう人物なのである。
 
 そんなマスターであるが、彼はどうやらくそ真面目に二次元へと向かう扉を開こうとしているらしい。

 彼が物理学にお熱なのも、それが一因であるのかもしれない。
 
 しかし、その無駄な情熱の火の粉が私と雪村さんへ降りかかってこようとは、人生とはなんとも不可思議なものである。

 しばらく無為な時間を過ごしたが、そんなマスターの話などどうでも良い。

 ここで、雪村さんの話に戻ることにする。

 彼女はとても明るく、はきはきと物を言う子だった。

 ややつり目気味の瞳が、たまに鋭く光るように思えたが、別に怖いとか冷たいとかいう印象はなかった。

 私の第一印象は、なんと元気な子だろうというものだ。
 
 さて、そんな雪村さんだが、研究室が近いせいもあってか、大学院での生活を始めてからときたま顔を合わせるようになった。

 一応顔見知りなわけだから、会えば挨拶もするし、時間があれば話もする。

 思えば、私たちはゆっくりとしかし確実に距離を縮めていったのかもしれない。


次へ→


~~~プチあとがき~~~
改めてみると、明らかに森見登美彦に影響を受けていることがよく分かる作品。
つづきは遅くとも今週末には頑張る。
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2011.01.10 Mon l 連載小説 l COM(0) TB(0) l top ▲

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