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お題「鈴」「象」「家来」



典型的な、巻き込まれ型異世界ファンタジーものになった。

やるならとことんだが、中途半端感は否めない。

が、三題噺だし、特に気にしない。

「鈴の音」

では、どうぞ。
夢か現か。

そんな夢を見た。

ああ、あれは夢だよ。

だって、俺は自分の部屋で眠ったんだもん。

友だちとバカみたいなメールを数回交わした後、俺はいつものように眠りについた。



だから夢のはずなんだ。



俺の身に奇妙なことが起こったのは、まもなく完全に眠りに落ちるな、というころだった。

耳の奥底に、鈴の音が響いた。



リーン、リーン。



はじめ、耳鳴りだろうと思った。

しかし、それは次第に大きくなっていく。



リーン、リーン。



次に、外で誰かが騒いでいるのかと思った。

しかし、どうやら鈴の音は身体の中から鳴っているらしいことに気づいた。



リーン、リーン。



俺はこらえきれずに叫んだ。

うるさい、と。

そして、それがトリガーとなり、俺の意識は途切れた。





目覚めた場所は何もない平原だった。

いや、俺は夢だと信じているので、“目覚めた”はおかしい。

俺は“夢の中”で平原にいた。

と、前方から何かが走ってくるのが見えた。

人と、明らかに人でない物がこちらに向かってくる。



「た、助けてくださぁい!」



人の方(これがまた実に可愛らしい女の子だった)が俺に向かって叫んだ。

どうやら彼女は後ろの何かに追われているらしい。

だんだんと近づいてくる何かを見て、俺は間抜けにも開いた口がふさがらなかった。



正直、気持ち悪いデザインだな、と思った。



俺の夢なら、もっとこう、たとえ敵キャラであっても、もう少しまともであってくれ。

と思うくらい、不格好で、しかもサイズがとても大きい化け物だった。

動きはとてつもなく遅いが、一歩がでかい。

奴が、ここまで来るのは時間の問題だろう。



「たす、助けて」



彼女が俺の背に隠れ、俺は自然と化け物と対峙する格好になった。

「た、助けるったって、どうすれば?」

俺は当然の疑問を口にしたが、彼女は、こいつ何言ってんの? という顔をして、首をかしげた。

「え? あなた、“鈴”をもってるじゃない」

「鈴?」

そんなものを持っていただろうか、と思うと同時に、彼女が俺の胸元を指差した。

「おう!?」

あった。

首飾りのようにして、俺は鈴をぶらさげていた。

こんなものを持っていた覚えはない。

いつの間に、こんなものが……。

「で、これがあったらどうなの?」

「え? 本当にあなた何もしらないで、それを持ってるの?」

彼女は早口でそうまくし立てる。

彼女が焦っているのは当然で、例の化け物はもう目前まで迫っているのだ。

「それを鳴らして、従者を召喚するのよ」

「従者? つまり、家来か?」

「そうよ。その鈴は召喚獣を呼び出す鈴。それを持てる人は限られているの。だから、てっきり兵士か何かだと思ったのに……」

後半は文句、いや非難めいたものだったが、俺はそれを無視して鈴を手に取った。

何の変哲もない、ただの鈴だ。

しかし、鳴らしてみる価値はある気がした。


だって、これは夢だ。


なんでもありだ。

ならば、鳴らしてみるのも、また一興。

化け物が腕を振り上げてきたし、彼女は俺にしがみついてくれている。

可愛い女の子の前で格好付けたいと思うのは、男の性ってやつだろ。



リーン、リーン。



鈴の音が鳴った。

眠りに落ちる前に聞いた鈴の音だった。



リーン、リーン。



これで、僕の家来となる召喚獣が来るはずだ。










――で、これだ。

象、にそっくりだが、象ではない。

だって、こんなに小さい。

犬くらいのサイズしかない象が俺の前に現れた。

「おいおい」

思わず、俺はそう漏らした。

化け物の腕はすぐそこだし、俺の家来は頼りない小さな象。そして、後ろには女の子。



逃げ場が消えた。



どうしようもない、と思い俺が目をつむったことをいったい誰が責められよう。

死んだ、と思ったのも束の間、鼓膜が破れるかというくらいの大きい音がした。

おそるおそる目を開けると、そこには倒れた化け物と平然とした俺の象がいた。

倒れた化け物は粒子分解されていくかのように、さらさらと消えていく。

「お、おう?」

「すごーい」

女の子は、そう言って、俺の手をとった。

「どうも、ありがとう」

「あ、ああ」

俺は照れながら、とりあえずそう言ったが、実際お礼を言われるようなことをした覚えはなかった。

そもそも何がどうなったのかさえ分からない。

状況から察するに、あの象が化け物を倒したのだろうか。

そう思って、俺は例の象に視線を向けた。

「あなたの召喚獣、小さいけど強いのね。……あっ」

すると、そいつは俺に向かって飛んできているところだった。

「うお!?」

象は俺の頭に飛び乗ると、戦いで疲れたのか、身体をだらけさせた。

そんな俺たちの様子を見ていた女の子が、愉快そうに笑って口を開いた。

「ねぇ、あなた。私と一緒に行かない?」

「え?」

「あなた強そうだし…・・・ね?」

上目遣いで、そんなことを言われて俺に断れる度胸があるはずもない。

だって、好みのタイプなんだよ、ちくしょう。

「まぁ、いいけど――」

どうせ夢だし、と続けようとして思いとどまった。

「やったぁ」

たまには、こんな良い思いをしてもいいだろう。

だって、これは夢なんだから。

夢、なんだから。



彼女が笑顔で俺を手招く。

早く来い、とのことだ。





…・・・できれば夢じゃなくて欲しいんだが。





先の戦闘で、疲れ切っている象の重みを頭の上に感じながら、俺はきつく目を瞑った。

次に目を開けたとき、俺がどちらの世界にいるのか。



まだ頭は重い。

しかし、彼女の声は聞こえない。

意を決して、ゆっくりと目を開いていく。



ぼんやりと景色が映し出されていく最中、俺は笑顔で手を振る彼女が目の前にいることを期待した。



完。


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2009.01.22 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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