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お題「煙突」「刺」「軍人」

時間切れ。

全体的に言葉が足りないけれど、最後の流れは特にひどいな。

猛省。

書き直すかなぁ。わかんねぇ。

とりあえず、どぞ。

僕にはとても可愛い彼女がいる。

可愛い、だなんて言っている時点でその惚気っぷりがよく分かるだろう。

僕みたいに何のとりえのない人間にとって、彼女はまさに高嶺の花だった。

なのに、今彼女はこうして僕の隣にいる。

僕は一生分の運を使い切ってしまったのかもしれない。

それくらい僕は幸せだった。



幸せだったのだから、それに甘んじていれば良かったのだ。

彼女だけを見ていれば良かったのだ。

けれど、理性とは案外脆いものだ。

僕は自分自身をどうしようもなく駄目なやつだと思う。



その子は有名な大金持ちの令嬢だった。

文字通りの箱入り娘で、世間のことなど何も知らない様子だった。

そんな彼女がひとりで外に出ている。

初めは目を疑った。

けれど、なにやら困っている様子だったので声をかけた。

すると、ご両親の結婚記念日の贈り物を買うためにこっそりと屋敷を出てきたのだが、道がよく分からないというではないか。

だから僕はほんの親切心から(若干の下心があったことは否めない)彼女に手を貸したのだ。

彼女が欲する物が売っている店に案内し、彼女の買い物を手伝った。

たったそれだけだ。

僕は彼女から感謝され、彼女とは別れた。

本当にそれだけだ。



「今日、一緒に居た子誰?」

家の前、唐突に声をかけられ、心臓が飛び出るかと思った。

そこにいたのは僕の愛する彼女であり、彼女は不安そうな顔つきでそう聞いてきた。

これは、つまりやきもちというやつか……。

僕はため息混じりに事情を説明した。

彼女が困っていたから手を貸してあげただけだ、と。

それを聞いて彼女は心底安堵したように表情を緩ませ、僕の頬に唇を当てる。

「そっか。ごめんね」

それだけ言って駆けていく彼女を見送って僕は自宅の玄関に手をかける。

そのときに気づいておくべきだったのだ。

あのときの彼女の瞳が、鈍い輝きを放っていたことに。



さて、生きていると思わぬ事態にめぐり合う。

僕はその後、頻繁にかの令嬢と出会うことになった。

ご両親が外の世界を知ることもいいだろうと判断したらしく、これまでの箱入り状態から卒業したらしい。

それで僕が彼女に近所を案内することになった。

少しでも気心の知れた人が、というのが彼女の言葉だった。

名目上は、親切心。

もしかすると、それは単なる言い訳だったのかもしれない。

正直な話、僕は彼女と一緒にいて楽しかったのだから。



そんな日々がいくらか続いたころ、再び彼女に問い詰められた。

「最近、あの子と仲良いね?」

「あの子……?」

すっとぼけてみせたのは逆効果だったのかもしれない。

「あの、大きなお屋敷の子」

「ん? ああ、まぁね」

「…………ふ~ん」

唇を尖らせる彼女を見て、僕は小さく微笑む。

僕にはもったいないくらいの彼女が僕にやきもちを妬いている。

それだけで嬉しくなるくらいに、僕は馬鹿なのだ。

だから、彼女のそれが、単なるやきもちだということに気がつかない――。



そして、その時がやってきた。

例の令嬢に街中を案内していると突然の雨に見舞われた。

結果、僕は屋敷に招かれることになった。

煙突のある家など初めて見たし、こんな大きな家に足を踏み入れたのも初めてだ。

緊張していたのは間違いない。

全く期待していなかったといえば嘘になる。

タオルを借りて濡れた頭をがしがしと拭きながら、思いがけないご招待に浮かれていた僕はそれを避け切れなかった。

彼女の唇が僕のそれに触れる。

触れる、というのは適切ではない。

押し付けられる。

初めてと分かる不器用なそれ。

彼女は押し付けたまま離さない。

僕は彼女に押し倒される形で床に転がった。

タオルが手から落ち、まだ濡れたままの身体で床に転がるが、それを気にしているどころではなかった。

僕と同様に濡れた彼女が、そのままの形で僕に密着しているのだ。

逃げ出そうと思えばできたろう。

引き剥がそうと思えばできたろう。

だが、僕はそれをせず彼女を受け入れた。

彼女を抱き寄せ、その小さな唇に触れる。

びくりと震える彼女の身体をさらに強く抱きしめる。

そして、僕の手が――





ガシャン!





という大きな音が聞こえた。

もう一度言っておこう。

生きていると思わぬ事態にめぐり合う。

いったいいつから見ていたのか、そして、いつ“入ってきた”のか。







煙突から入ってくるのはサンタクロースだけで良い。







僕に覆いかぶさるようにしていた彼女が悲鳴をあげる。

火照った顔が瞬時に青ざめる。

僕はとにかく彼女を庇おうと彼女の前に立ちふさがる。

そして気づく。

庇う相手を間違っている、と。

「誰?」

そんな僕の思考を止めるように身体を震わせながら彼女が訊ねる。

「……僕の、彼女だよ」

「かの、じょ?」

震える声が、それに答える。

それに呼応して虚ろな瞳が僕と後ろの彼女を捕らえた。

「何、してたの?」

心底凍りつくような声だった。

僕は何も答えられない。

完全に僕が悪い。

いささか調子に乗りすぎた。

だから、とにかく謝ろうと彼女に近づいて頭を下げた。

彼女は僕の言葉を聞いているのか聞いていないのか判断のつかない表情を浮かべた。

このままでは駄目だと思い、僕はもう一度頭を下げた、そのときだった。





良く訓練された軍人でもなければ避けれなかっただろう。





深々と刺さったナイフから赤い液体が滴り落ちる。

どこからそんなものを取り出したのか、なんて考えるだけ無駄だ。

彼女ほどの身分になれば、護身用に持っていてもおかしくはない。

不思議と刺された部分は痛くなかった。

痛いのは、もっと別の場所だ。

彼女にそんな顔をさせたくはなかった。

……でも、そうさせたのは僕だ。

ならば、それに報わなければなるまい。

今度は、ちゃんと彼女を庇えた。

それで充分だと思いたい。

遠ざかる意識の中、僕は最期にもう一度彼女の顔を見た。







とても美しい顔だと思った――。


完。


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2009.05.21 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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