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お題「メイド」「洗濯機」「車」

最近全くチェックしていなかったのですが、今日久しぶりにweb拍手を確認しました。

どうせ誰も押してないだろうな、と思っていたらありました。

しかもコメントもっ!

1人でもクリックしてくださる方がいると、想像以上に喜びます。

で、今回はコメントがあったことで少々舞い上がっております。

どなたか分かりませんが、ありがとうございます。

後ほど、返事の方を書こうかと思います。

とりあえず、三題噺をどうぞ。

私はこの大きなお屋敷でメイドをしている。

自分で言うのもなんだけど、結構頑張っている方だと思う。

ご主人様は優しいし、待遇も良い。

だけど、問題がある。



それは、私が猫を被っているということだ。



丁寧な口調なんて舌がもつれそうになるし、

この格好も歩きにくくて叶わない。

正直、こんな仕事は向いていないと思う。

誰かのために働くなんて、私には無理だ。

できることならすぐにでも辞めてしまいたいくらいなのだが、辞めるわけにはいかない。

私の家系は、代々この家に仕えている。

私が投げ出してはならない。

そういうところは曲げてはならないのだ。



さて、今日も掃除を終え、朝食を作り、それからご主人様を送り出す。

ご主人様はまだ学生の身なので、学校に行かなければならないのだ。

私はその隙に洗濯をする。

しかし、この洗濯機。

最近調子が悪いのだ。

ただでさえ忙しいというのに、機械の機嫌が悪いせいでロスを食うのはいただけない。

だから、ちょっと素が漏れてしまうこともある。

「またかよ、この洗濯機っ!」

メイド服で悪態をつく。

こんな姿を見られたらクビも免れないかもしれない。

「動けよ!」

そう言って洗濯機をがつんと蹴り上げた。

と、後方でがたりと音がする。

嫌な予感というのは当たるものだ。

私は首をゆっくりと動かして振り向き、そこに誰がいるかを確認した。



ご想像通り、青い顔のご主人様がそこに居て、私を指差しながら口をぱくぱくとさせていたのだ。



「……えーっと、今のは?」

「ははは、はい? ななな何のことでしょう?」

動揺してはいけないと思えば思うほど動揺してしまう。

完全に猫を被っていたのがばれてしまった。

「そっちが、素?」

終わった――。

こんな無作法メイドなど傍に仕えていてはまずいだろう。

私はがくりとうな垂れると、顔を歪めたご主人様に向き直り、すぅと息をすった。

「ま、そうだね。正直かったるいのよね、この格好」

悪びれる様子もなくそう言って、私はご主人様の脇を過ぎていく。

去り際、私はつぶやくように言う。

「ちょっとだけ暇をいただきます」

それは多分、クビ宣告される前の最後の抵抗だったのだと思う。



屋敷を出て、外の空気を思い切り吸い込んだ。

ああ、やってしまった。

お母さん、お父さん、ごめんなさい。

私の代で全て終わってしまいました。

私は心の中で謝りつつ、とぼとぼと道を歩いた。

とぼとぼ、という表現をしたことに驚く。

思いのほか、私はダメージを受けているらしかった。

あの屋敷で過ごした日々は、結構楽しかったのかもしれない。

けれど、もう後の祭りだ。

私はとりあえず実家にでも帰ろうと駅へ向かうことにした。



悪いこととは続くものだ。


横断歩道を渡っていた私に向かって信号無視した車がつっこんで来た。

普通なら避けきれただろう。

けれど、足を動かそうとして気づいた。

私は動きにくいメイド服のままだ。

これはきっと避けきれない。

私はぎゅっと目を瞑り、来るべき衝撃に走馬灯を視た。



   ⇔



僕はこの大きなお屋敷に住んでいる。

あまり仰々しいのは好きではないんだけど、仕方がない。

代々受け継がれているお屋敷を無下にするわけにはいかないからだ。

僕の家にはお屋敷の例に漏れずメイドがいる。

料理も上手いし、よく働く。

何よりも可愛らしいメイドだ。

歳も近いおかげで、気兼ねなく付き合えていると思う。

彼女がメイドで良かったと常々思うくらい、僕は彼女を気に入っていた。




さて、その日はいつもと変わらぬ一日だった。

学校に向かうために彼女に見送られて屋敷を出る。

外に待機してた車に乗ろうとして、忘れ物に気がついた。

お昼のお弁当がない。

僕はため息混じりに屋敷に引き返す。

彼女に訊ねればすぐに分かるだろう。



屋敷に戻って彼女を探す。

と、洗濯機があるところからなにやら声が聞こえた。

そこに彼女がいるのだろうと推測してそちらに近づく。

そして、信じられない言葉を聞いた。

「またかよ、この洗濯機っ!」

メイド服で悪態をつく彼女がそこにいた。

「動けよ!」

そう言って洗濯機をがつんと蹴り上げている。

見てはいけないものを見てしまった。

慌ててその場を去ろうとしたせいで、僕の身体が壁にぶつかった。

がた、という音がして彼女が振り返る。



青い顔の彼女はこちらに気がつくと、目と口を開いたまま固まった。



「……えーっと、今のは?」

「ははは、はい? ななな何のことでしょう?」

普段の姿からは想像ができないくらいに動揺している。

いつもは猫を被っていたのかもしれない。

「そっちが、素?」

言った瞬間、しまったと思った。

彼女は明らかにうな垂れると、静かに口を開いた。

「ま、そうだね。正直かったるいのよね、この格好」

繕うこともせずそう言った彼女は僕の脇を過ぎていく。

去り際、彼女はつぶやくように言う。

「ちょっとだけ暇をいただきます」

僕は彼女に何も返すことが出来なかった。



けれど、すぐに足を動かす。

彼女をこのままにしていて良いのか。

……考えるまでもない。

良いはずがない。

僕は彼女のことが気に入っていたのだ。

だから、僕は彼女を追いかけた。



彼女の後姿を見かけ、声をかけようとしたときだ。

横断歩道を渡っていた彼女に向かって信号無視した車がつっこんで来た。

「危ないっ!」

と叫んだかどうかは定かではない。

僕が何かしなくても、彼女が車を避けられたかどうかなんてどうでも良い。

とにかく僕はあらんかぎりの力を足に込めて、彼女に向かって飛び出したのだ。


   ⇔


この付近では有名なお屋敷の主人が交通事故にあった。

その話は一気に知れ渡った。

使用人を守るために身体を張った、という小さな武勇伝として。

さて、そんな彼が入院している病院に毎日通い詰める一人の女性の姿があった。

通り過ぎる人誰もが目を留めるような、日常生活では滅多にお目にかかれない得意な格好をしている彼女は、かいがいしく彼の世話をする。

足を骨折して動けない彼の服を着替えさせ、そこまでしなくても良いのにご飯を食べさせてやる。

「それくらいは自分でできるよ」

と照れながら言うご主人様に彼女は答える。

「そう言われましても、これが私の仕事ですから」






……そんな言い方ではない。

「うるさいわね。病人は黙って寝てれば良いのよ。聞き分けが悪いと、あの洗濯機みたいに蹴り飛ばすわよ」

被り物をとり除いた彼女は、口も態度も悪く、こう言うのだ。

「それは勘弁して欲しい」

「ふふっ」

けれど、優しく笑うのだ――。

これまで浮かべたことのないくらい、幸福そうに笑うのだ。



完。


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2009.05.16 Sat l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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