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お題「牢屋」「象」「王女」

雨が、降っています。

今日は大学に行く用事があったのできつかった。

明日も1限があるので、ぜひとも晴れていただきたいものです。

あ、どうぞ。
これは、遠い世界の物語。

その世界には人間と魔物が暮らしていた。

人間は各々が国を作り、魔物も魔物で国を作っていた。

共存をしているわけではない。

2つの種族は戦争を繰り返し、自らの種が生き延びるために領土を拡大していった。

さて、この物語は、そんな世界に存する小さな国と魔物との戦いの話である。





その国は1人の若い王女が治めていた。

若い割りには頭も切れ、とても優秀な王であった。

そんな彼女の国に突如として魔物の大群が襲い掛かってきた。

なす術もない、というのはこれを言うのだろう。

王女は苦虫を噛み潰したような顔をして、家臣に告げた。

「現在の戦況は、象が蟻を踏み潰しているかのようです。

あの魔物たちを前にすれば、我々の小国などひとたまりもありません」

身体を震わせながら家臣は神妙に頷いた。

「あなたたちは逃げなさい」

「何、を?」

「この国は私のものです。私には最期を見届ける義務があります」

「ならば、我々もご一緒に――」

「あなたたちは生きなさい」

柔らかく、美しい笑顔。

「あなたたちは生き延びなければなりません」

その笑顔で言われると反論の余地もなかった。

王女の覚悟を悟った家臣は、王冠を外した彼女に深く頭を下げると直ちに国を出て行った。

残されたのは、王女だけである。

「……さようなら」





「……」

国を捨てて逃げ出した者の中に、1人の青年がいた。

王国軍隊の隊長を務め上げていた男である。

年齢のほどは20代前半という若さだったが、その人間離れした運動神経と剣術により隊長を任されることになった。

戦において、彼が負傷をしたという話すら出ないくらい、まさに無敵というに相応しい男だった。

そんな彼は王女の命により、しぶしぶと国から立ち去ったのだが、それでもやはり王女を置いて出て行くことなどできなかった。

足は自然と国へと舞い戻る。

青年は剣を抜き、魔物の大群が詰め掛ける母国へと飛び込んでいったのだ。





そこに国の跡形もなかった。

燃え盛る炎の中、青年は城を目指した。

王女の安否を確かめなければならない。

城下町を燃やす炎に青年の頬がこげる。

しかし、そんなことは気にも留めずに青年は駆ける。

その速さは音速のごとく。

「王女様っ!」

果たして、王女は無事であった。

「…………」

「王女、様?」

「ナゼ、モドッテキタ?」

青年が恐怖を覚えたのは、これが初めてだった。

そこにいたのは王女であって王女でない。

「……誰だ?」

「…………」

王女でないものは、いきなり勇者に飛び掛った。

慌てて避けるものの腹部に鋭い痛みが走る。

「なっ――!」

王女でないものの腕がナイフのように尖っている。

それが青年の腹部を突き刺したのだ。

風穴が開いた腹部から血が噴き出す。

青年はそのまま地面に倒れ、気が遠くなるのを感じた。





「…………お目覚めですか?」

青年が目覚めたのは薄暗い場所だった。

土の壁に、土の天井。

ここは城の牢屋だ。

「んん」

くらくらする頭を抑えて青年は身体を起こした。

そんな青年に声をかけるのは、彼の隣に座るひとりの女性。

「大丈夫ですか?」

青年はその女性の顔を見て驚きを隠せなかった。

「あ、あな、あなた……は?」

にこりと笑った女性の顔は、見紛うはずのない――



まさしく王女のそれだった。



「私はこの国の王女です」

「え? で、でも……」

王女は淋しそうに眉を伏せると、ぽつぽつと語り始めた。

曰く、数年前に王女は何者かに襲われこの牢屋に幽閉されたこと。

曰く、王女を襲ったのは魔物であること。

曰く、それから王女として君臨していたのは、魔物が化けた存在であること。

曰く、魔物たちはこの国を乗っ取る機会を今か今かと待ち構えていたこと。

曰く、それが今日実行されたということ。

事実を聞き終えた青年は悔しそうに地面を叩きつけた。

その拳が血で染まる。

「くそっ――! なんてことだっ! 俺は魔物に忠誠を誓っていたというのかっ!!」

悔しさに顔を歪める青年に、王女は女神のごとく微笑みを浮かべ、彼の手をとった。

彼の手は歴戦の戦士だというのに傷一つ無い美しい手だった。

王女はそれを優しく包み込み、口を開いた。

「この国はもう終わりです。直にここも燃え尽きるでしょう」

「…………」

「あなたのことは覚えています。私が任命した隊長様ですね。長い間、ご苦労様でした」

王女はすっと青年から手を離す。

その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「私とともに、この国の最期を――」

しかし、王女は最期まで毅然とした態度であった。

決して涙を流さなかった。





代わりに、血を流した。





「……な、何、を?」

青年は王女の身体からナイフを抜くと、にやりと笑った。

その頬にも、腹にも、手にも、怪我は、ない。

「まさか先を越されるとは、な」

青年は王女が苦しまないように、その首にナイフを通す。

「――っ!」

息絶えた王女を見下ろしながら、青年は呟いた。

「治癒能力がないということが、人間という存在の弱さを表しているとは思わないか?」

青年は王女の血溜まりを踏みつけ、牢屋を抜け出す。

炎はすぐそこまで迫っていた。

「後からきた魔物にやるわけにはいかねぇな」

舌なめずりしながら剣を抜く顔は、魔物のそれだった。





「コノクニハオレノダ」



完。


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2009.05.07 Thu l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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