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お題「時計」「夜明け」「紅茶」

久しぶりにやると勝手を忘れているねぇと。

GW突入。

予定は未定。

どうぞ。
明けない夜はない。



果たして、そう言いきることができるだろうか。

夜が明けるか明けないか。

今の僕にとって、それは最重要事項だった。

僕は街中を走り回っている。

“奴ら”から逃げるために。



初めに言っておく。

僕はしがないこそ泥だ。

今日も、宝石や時計といった小さくて持ち運びの簡単なものをいくつか盗み出した。

こうすることでしか、食いついでいけないくらい、僕は切羽詰っていたのだ。

いつもいつも盗みが上手く行くとは限らない。

今日は上手く行かなかった日だった。

防犯ブザーが鳴り響き、あっという間に警察が到着した。

僕はとにかく戦利品をいくつかだけ袋に詰めると一目散に駆け出した。

警察に追われることなど何度もある。

この街の構造も充分に知り尽くしている。

だから今日も大丈夫。

僕は駆けながら、そんな風に思っていた。





つまり、僕は運が悪かった、ということなのだろう。

そういうところに片を付けなければ、どうしようもなかった。

街中に巡る路地裏を走り抜け、少し開けた場所に出た。

人気のない、閑散としたところ。

そこで、見てしまったのだ。

別に見たくて見たわけではない。

けれど、そんな言い訳など通用しない。

まさか自分に拳銃が向けられる日がくるとは思わなかった。



いわゆる闇取引というやつを目撃した僕は、こうして追われる身となったのだ。





警察に加えて、分けのわからない集団に追われることになった僕は心底困り果てた。

空に月が出ていないが、それはつまり僕にツキがあるということだ。

灯りの少ない場所を逃げるのに、月明かりは結構邪魔になる。

僕は行きも絶え絶えに奴らから逃げる。

警察ならまだ良い。

しかし、後者の集団に捕まったら――。

奴らに向けられた拳銃を思い出し、身震いした。

触ったわけではないが、あれほど冷たい物体を見たことがない気がした。

怖い、なんてものじゃない。





警察はともかく、陽が出ればあの集団は追っては来ないだろう。

奴らだって、日陰の人間だ。

僕はそれを信じ、とにかく“夜明けまでの鬼ごっこ”をすることに決めた。

それまで逃げ切れば、僕の勝ちだ。

早く明るくなれ、と祈りながら……。





足音が迫る。

後ろから、前から、あるいは横から?

あまりにも長い時間走ったせいだろうか、方向感覚が狂う。

紅茶に落としたばかりのミルクのように、視界がくるくると回り、おまけに頭ががんがんする。

追っ手がどこからやってくるかがわからない。

気づいたときには、誰かの右手が伸びていた。

その手は僕の腕を掴む。

掴んだ相手は警察で、僕は安堵のため息をついた。

これで、ようやく鬼ごっこは終わりだ。

僕はその場にへたりと倒れこんだ。

盗品の対価に似合わぬ疲労は、僕を強く蝕んでいた。





警察に引かれていきながら、僕はふと空を見上げた。

ぼんやりと辺りが明るくなり始めるところだ。

ああ、ようやく夜明け――



意識が途切れたのは、意図的なものだった。



そう。

確かに僕は決意した。

夜明けまでの鬼ごっこ。

陽は、

まだ……。



完。


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2009.05.01 Fri l 三題噺 l COM(0) TB(0) l top ▲

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